保険調剤薬剤師が身につけておくべき知識
疾患知識
症状や経過、原因や発生機序を理解してきおきましょう。
本疾患を理解する上では、セロトニン、ドパミン、ノルアドレナリンのモノアミンの働きが大切です。
うつ病にはパニック障害PTSDなど神経症といった関連疾患もあり、また類似した疾患である双極性障害などとの共通点と相違点について整理しておきましょう。
うつ病は女性に起こりやすい疾患でありますが、PMSなど女性特有のうつ病があります。
また若者のうつ病は典型的な従来のうつ病と異なる特徴がありますので相違点を理解しておきましょう。
治療知識
うつ病の治療には薬物治療をはじめ、心理療法やカウンセリング、運動療法など様々な治療法があります。
基本となるのは休養と薬物治療になります。
また身体症状(睡眠障害や食欲不振、倦怠感など)がある場合、優先的に治療します。
身体症状が改善すると、精神症状が軽減することが多いと言われています。
うつ病と双極性障害では治療が異なるので相違点を理解しておきましょう。
薬物治療では本疾患の原因がセロトニンやノルアドレナリンなどのモノアミンの不足と考えられているのでこれらを増やしたり、作用を増強したり、分解を抑えたりする薬剤が治療薬として用いられます。
① 3環系抗うつ薬
② 4環系抗うつ薬
③ セロトニン受容体拮抗・再取り込み阻害薬
(SARI)
④ SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
⑤ SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
⑥ NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)
上記の従来からある典型的な治療薬に加え、新たな下記の薬剤が処方されるようになりました。
⑦ 気分安定薬(デパケン、テグレトール、ラミクタールなど)
⑧ 非定型抗精神病薬(エビリファイ、ジプレキサなど)
これらの薬剤の作用機序や特徴、相互作用や副作用についても押さえておきましょう。
服薬指導や経過モニタのポイント
はげましは厳禁です。はげますことでかえって患者を追い込んでしまいますので、あせらないこと。必ずよくなることを伝えましょう。
また、自殺の兆候に注意しましょう。状態の悪い極期より、回復期や中間期に自殺が多いです。
自殺企画者は周囲にサインを出していることがよくあるので患者家族にも指導しましょう。
治療継続のモニタが大切です。抗うつ剤の多くは十分な効果発現までに時間を要するので、服用の継続が大切です。また急な中止ではめまいや悪心など中断症状が現れることがあるので、コンプライアンスが大切であること指導しましょう。またうつ病の治療は長期の時間が必要なため、根気強く継続することが大切であることも指導しましょう。
抗うつ薬の副作用は軽度なものから重篤なものまでありますので、投薬時などではこれらの初期症状のモニタを行いましょう。
抗うつ剤は比較的、併用禁忌が多いです。
併用禁忌ではありませんが、QT延長やセロトニン症候群のリスクが高くなる併用や肝臓のCYPでの相互作用など注意が必要な相互作用も多いですので、投薬時お薬手帳の確認や併用薬の有無のモニタを行いましょう。
うつ病の患者は話を聴いてもらえるだけで楽になることがあります。
投薬時、傾聴や共感の姿勢で話を聴いて、精神的サポートを行いましょう。
治療以外の話も大切です。
臨床問題にチャレンジ ~あなたは答えられますか?~
55歳男性。職場の異動により、仕事の内容が全く変わってしまい、悩むことが多くなり、夜も眠れない日々が続き、出社するときに下痢や腹痛を伴うようになった。
これといった趣味もなく、休日は自宅でゴロゴロするだけ。
最近は飲酒量も増えてきている。
無断欠勤が続き、奥様に連れられて心療内科を受診し、うつ病の診断を受けました。
現在眼科で緑内障治療のキサラタン点眼液と泌尿器科で前立腺肥大治療のユリーフ、
エビプロスタット、整形外科でロキソニン、メチコバール、テルネリンが処方され
服用継続中。
問1 上記症例で妥当な処方薬を下記のうちから2つ選んで〇を付けてください。
- トフラニール
- トレドミン
- デパケン
- パキシル
- テグレトール
- リーマス
- トリプタノール
- デプロメール
- リフレックス
問2 うつ病の主な症状に該当しないものに1つ選んで〇を付けてください。
- 物忘れ
- 殺念慮
- 不眠
- 思考障害
- 悲哀感
問3 上記患者様が薬物治療を受けることになったが、投薬時に「精神科の薬はクセになるから怖い。他の方法はないのか?」と質問しました。
薬剤師としてどのように説得するか答えてください。
問4 非定型抗精神病薬がうつ病に用いられることがあります。その機序を簡単に説明して下さい。
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