薬剤師向け学術情報 [統合失調症編]

薬剤師向け学術講座

保険調剤薬剤師が身につけておくべき知識

疾患知識

人は思考や行動、感情、知能などの能力を目的に沿ってまとめていく能力がありますが、
統合失調症ではこのまとめていく能力が長期間にわたって低下し、その経過中に幻覚、妄想、
まとまりのない行動がみられます。
以前は精神分裂病と呼ばれていましたが、差別的意味合いが強いことから、2002年(平成14年)に統合失調症に改名されました。
統合失調というネーミングは、精神分裂病が「人格が分裂する病気」という誤解を生みやすく悪いイメージや偏見が固定してしまっていることから、「精神機能の統合が乱れている状態」という
意味をあらわしたもので、回復が可能であるというニュアンスがこめられています。
 特殊な疾患のように思われがちですが、罹患率は1%と比較的頻度の高い疾患で気管支喘息と同じくらいといわれています。
 

本疾患を理解する上でモノアミンのドパミンが重要です。
正確な原因は不明でありますが、遺伝的要因と環境的要因が組み合わさっておこることが考えられており、脳内のドパミンが過剰に働くことが原因であります。
最近わかったこととして、脳内の主要な興奮性の神経伝達物質である、グルタミン酸の機能異常がベースにあって、思春期以降に心理的なストレスがきっかけとなってドパミンの過活動が生じ、精神症状が発現すると考えられるようになりました。
したがってドパミンの脳内での作用について理解を深めましょう。
統合失調症の治療薬である抗精神病薬は脳内のドパミン系に作用して精神病の症状である興奮や、幻覚や妄想を抑えると同時に、この系に作用することでの副作用も生じます。
また、本疾患ではセロトニンの5-HT2Aも関与しているようです。
最近治療の主流になりつつある非定型抗精神病薬の多くはこの受容体をターゲットにしています。
 

本疾患では幻覚、妄想といった症状・・・陽性症状が目立ちますが、一見、うつ病の症状のような感情鈍麻、会話の貧困といった陰性症状、認知症のような集中力、記憶力、整理能力、計画能力に問題がおこる認知障害もあります。

治療知識

薬物治療がメインになり、他にリハビリテーションや地域支援活動、そして心理療法なども治療の柱になります。
リハビリテーションや地域支援活動では、地域社会で生きていくのに必要な技能を教えることを目的として、仕事、買い物、身なりなどの自分の身の回りを整えること、家事、協調性などを学びます。
心理療法はいわゆるカウンセリングで本人、家族、そして医師との間に協力関係を築くことを目標とします。
 

薬物治療は本疾患において不可欠のものであります。
しかし、本邦では従来、科学的根拠のない多剤大量投与により錐体外路症状などの副作用での2次的な有害症状の出現などの問題がありました。
最近欧米のように、錐体外路症状の出にくい新しい薬剤(非定型抗精神病薬)の単剤治療が主流になりつつあります。
 

薬剤師としては定型、非定型抗精神薬の作用機序、特徴、相互作用、副作用の知識を習得し、不客指導や經過モニタに役立てましょう。

服薬指導や経過モニタのポイント

本疾患の治療薬では副作用が問題になることが多々あります。
悪性症候群や不整脈のような、生命にかかわる重篤なものや、致死的ではありませんが、錐体外路症状ではQOLの低下や服薬拒否がおこったりすることもあり、気を配る必要があります。
また体重増加や高プロラクチン血症に伴うデリケートな症状がないかなどもチェックしていく必要があります。

さらに非定型薬のMARTAでは血糖上昇の副作用があるので、血液検査の実施状況や血糖値の経過を確認しましょう。
副作用の情報提供やモニタについては患者様に過度の不安を与えないように、配慮が必要であります。
多くの定型薬でパーキンソン病の患者様には禁忌であるため、初回投与のチェックを忘れないようにすること、また非定型薬のMARTAでは糖尿病及び既往歴のある患者様に禁忌であるので必ず確認しましょう。

統合失調症の患者様では病識がなかったり、医師から病気の告知を受けてなかったりするケースもありますので、そういった場合、まともに薬効の情報を提供してしまうと服用拒否の原因や受診拒否につながることもありますので、あらかじめ医師とのすり合わせをしておくなど、配慮が必要になります。

幻覚や妄想などの症状は患者様当人にとっては現実の出来事でありますので、全否定するのではなく、患者様の不安や恐怖に共感的対応を示すとともに、その苦労に対して労をねぎらい、ラポート(信頼関係)を形成することが大切であります。
症状経過を話したがらない患者様には、無理に聞き出したり、一方的に話をしたりすると、
患者様の負担になりますので、最低限の処方監査、経過モニタにとどめ、毎回の投薬で少しずつ進めていくようにしましょう。

相互作用では、非定型抗精神病薬が主流である現状において、併用禁忌が問題になることは少ないです。
むしろ他の医療機関での重複投与、特に睡眠導入剤や抗不安薬、抗精神病薬などの重複服用に注意が必要でありますので他科受診がないか確認しましょう。
統合失調症では高い割合で服薬の不履行がみられ、服薬の中止により、再発率が高いといわれています。アドヒアランス不良の原因はさまざまでありますが、病識の欠如や副作用によるもの、また効果不満が考えられますので、投薬中にこれらのことで、服用が継続されていないことが感じられたら医師へ報告して対応してもらうようにしましょう。

症例問題にチャレンジ ~あなたは答えられますか?~

40代男性。20代半ばで統合失調症を発症。入退院を繰り返していたが、最近は病状が安定している。
処方薬は セレネース(2) 3錠 1日3回 毎食後
     マイスリー(5) 1錠 1日1回 寝る前
  
併用薬は アムロジピンOD(5)   1錠 1日1回 朝食後
     アトルバスタチン(10) 1錠 1日1回 夕食後
     アマリール(1)     1錠 1日1回 朝食後
     エクア(50)      2錠 1日2回 朝、夕食後

    (内科からの処方)

院外薬局での服薬指導において、「最近、時々手の震えがあって、生活しにくい」との訴え
があった。来局時の様子も歩き方がぎこちなく、のろのろとしていていた。
薬剤師が処方医に疑義照会を行い、その状況と、患者の訴えを報告。
医師から下記の処方へ変更するように指示があった。
      リスパダール(1) 1錠 1日1回 朝食後
      リスパダール(2) 1錠 1日1回 寝る前
      マイスリー(5)  1錠 1日1回 寝る前
尚、患者体質において、アレルギーや副作用既往等に特記すべきことはありません。

問1 処方変更の理由を薬理学(作用メカニズム)的に説明してください。
 
                                     
問2 医師からの変更が妥当かどうか判断してください。またその理由もあわせて答えて下さい。(尚、クロルプロマジン換算での力価は変更前と変更後で同じです。)

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